会長あいさつ

第8代神奈川腎研究会会長を拝命するにあたって

〜腎臓・透析・移植医療を包含する『Total Kidney Care』をめざす
医療従事者の研究会へ向けて〜

横浜市立大学 循環器・腎臓・高血圧内科学 田村功一

田村功一

 2022年度の第102回開催から、前会長の虎の門病院・分院腎センター内科の乳原善文部長の後任として、歴史ある神奈川腎研究会の第8代会長を拝命いたしました横浜市立大学循環器・腎臓・高血圧内科学教室の田村功一です。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

 神奈川腎研究会の歴史は長く、第一回として1974年(昭和49年)7月19日に当時横浜市立大学医学部泌尿器科教授の高井修道先生を初代会長として開催されました。副会長は前田貞亮先生(関東労災病院, 2015年まで).幹事は三村信英先生(虎の門病院分院,2004年まで),柴垣昌功先生(川崎市立井田病院, 2004年まで),笹岡拓雄先生(横須賀共済病院,2000年まで),小柴健先生(北里大学,1977年まで),遠藤忠雄先生(北里大学,2001年まで),森木光司先生(国立療養所神奈川病院,2004年まで),石川丈之先生(伊勢原協同病院,2001年まで),日台英雄先生(横浜市立大学医学部泌尿器科,その後横浜第一病院へ, 2004年まで)の10名での船出であったとの記載が、乳原善文先生にお願いして寄稿頂きました、科学評論社『循環器内科(https://www.kahyo.com/category/A1-J)』の「神奈川腎炎研究会・神奈川腎研究会の歩みと今後」(85巻1号: p.90-p.95, 2019年刊行)に詳細に記載されています。

 神奈川腎研究会は、東海大学、聖マリアンナ大学、北里大学等々の腎臓内科や泌尿器科の各教授の先生方を中心に会長職を務められ本研究会が支えられてきました。その結果、現在に至るまで定期(年2回)開催されており、既に100回以上の開催実績がある歴史的にも由緒ある研究会です。この研究会発足に伴い全国に透析が広まり、さらに日本透析医学会ができたという歴史的な研究会であるとも教えて頂きました。また、現在では全国で2番目に多い神奈川県の透析患者の医療を担う施設からなり日本透析医学会に認定された神奈川県における地方会としての役割を果たしていることも教えて頂きました。そして、神奈川腎研究会の歴代の会長である、初代高井修道先生、2代目前田貞亮先生、3代目佐藤威先生、4代目石田尚志先生、5代目木村健二郎先生、6代目鎌田貢壽先生、現在の7代目乳原善文先生に続いて、この度初代の高井先生に続いて実に1977年以来の2人目の横浜市立大学在籍者として、私が2022年5月開催の第102回神奈川腎研究会から8代目会長を拝命することになりました。

 今回、本研究会の会長を拝命するにあたっての私の抱負について述べさせて頂きます。少子高齢化が進行中の我が国において求められている健康長寿のさらなる向上にとっての大きな課題は、非感染性疾患(NCDs: Non-communicable diseases)への対策向上ですが、これは私ども腎臓・透析・移植医療を包含する『Total Kidney Care』をめざす医療従事者(医師、薬剤師、ME・CE、栄養士、看護師、保健師、腎臓病療養指導士など)の使命とも密接な関係にあると考えます。

 腎臓・透析・移植医療を包含する『Total Kidney Care』に関係する疾患は、腎臓病、糖尿病・高血圧、脳心血管病であり、これら病態は互いに密接に連関し共通の病態基盤を有し、同一患者に併存する場合も多いことが特徴であるために、腎臓学会は腎臓病を中心とした共通の病態基盤に対峙していると言っても過言ではないと考えます。したがって、これらの病態は、一体的に”心血管腎臓病=病態連関病”として捉えるべきであり、各病態に対する個別的対応とともに、包括的対応による”心血管腎臓病=病態連関病”の克服も重要と考えます。そのような中、私どもの循環器・腎臓・高血圧内科学教室では、1853年黒船来航の横浜・神奈川の歴史に根ざす「門戸開放」、サイエンス・アカデミアの高みをめざす「研究重視」、地域貢献重点の「患者第一」を理念としています。

 その点、腎臓の機能は、単独臓器によって調節されるとともに、多臓器間のネットワークによっても調節されるため、腎臓・透析・移植医療を包含する『Total Kidney Care』をめざす神奈川腎研究会は、生活習慣病〜保存期腎臓病〜透析・移植期腎臓病の各ステージにおける “心血管腎臓病=病態連関病”に克つための全人的・包括的医療を推進していくができる研究会と考えます。

 私は、上記理念を具現化する組織の一員として、”心血管腎臓病=病態連関病”に対する腎臓を起点とした新規治療・診断法開発のための基礎研究・トランスレーショナル研究や疫学研究、臨床介入研究を推進するとともに、関連の学会・組織や行政とも連携し、Withコロナ・Postコロナ時代に対応した、生活習慣病〜保存期腎臓病〜透析・移植期腎臓病にわたるシームレスな腎臓病診療連携体制構築にも注力しています。そして、国内では2020年2月のDP号アウトブレイクからのCOVID-19パンデミックでは、神奈川県との密接な連携のもと、ハイリスクの透析コロナ患者さんのための神奈川モデル-ハイブリッド透析版KINTONE 調整機関体制を構築し、調整機関責任コーディネーターも務めており神奈川県における透析医療への貢献にも鋭意協力しております。

 私は、神奈川腎研究会では、今後は若手向けの教育企画やAwardセッション企画など、腎臓・透析・移植医療を包含する『Total Kidney Care』のさらなる推進を通じて国民の健康長寿向上に将来貢献してくれると期待される若い世代も鼓舞したいと思います。浅学非才の身、伝統ある神奈川腎研究会の会長を務める器でないことは、重々承知しておりますが、先輩の先生方のご指導・ご協力・ご支援をいただきながら、本会の運営に精一杯努力し、腎臓・透析・移植医療を包含する『Total Kidney Care』の発展に幾らかでも貢献できればと考えますので、何卒ご指導宜しくお願い申し上げます。

令和4年5月吉日

第8代 神奈川腎研究会 会長 田村功一